【研究成果報告】Wntシグナル強度を反映するレポーターマウスR26-WntVis

2016年6月17日
報告者

徳島大学先端酵素学研究所・初期発生研究分野 助教 竹本龍也

 

研究タイトル

Wntシグナル強度を反映するレポーターマウスR26-WntVis

 

研究グループ
  • 徳島大学先端酵素学研究所 竹本龍也・鈴木仁美
  • 理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター 阿部高也・藤森俊彦ほか
  • 京都産業大学総合生命科学部 近藤寿人

 

研究概要

研究の背景

Wntシグナルは胚発生過程のみならず、がんなどの種々の疾病の発症にも深く関与している。胚または個体におけるWntシグナルの分布と強度を明らかにすることは、胚発生や疾患におけるWntシグナルの役割を明らかにする上で重要である。特に1細胞レベルでの解像度で、Wntシグナルの強度を計測できるWntレポーターマウスは、今後の研究において必要になるであろうと考えられる。

これまでに様々なWntシグナルレポーターマウスが作製されている。多くのレポーターマウスは、レポーター遺伝子をマイクロインジェクションにより受精卵前核に導入することで、ゲノム上のランダムに挿入させることにより作製されてきた。しかしながら、これらのレポーターマウスでは、レポーターの発現がゲノム挿入部位によって大きく異なり、シグナル強度を評価するのが困難であった。

 

研究の内容と成果

本研究では、ES細胞での相同組換え法により、Wntレポーター(WntVis)を安定的ゲノム領域として知られるRosa26遺伝子座に挿入することで作製した(図1)。作製したレポーターマウス(R26-WntVis)は、Wntシグナルに応じてH2bEGFPレポーターを発現する。この活性をマウス6〜12日目胚で解析したところ、原条領域や四肢の伸長端、乳腺の原基などで活性が観察された(図2)。それぞれの胚領域で、シグナル強度に応じてレポーターを発現するという特徴を有しており、これまでに作製されたレポーターマウスとは異なる。

 

図1. Wntシグナルに応じてH2B-EGFPが発現するトランスジーンをROSA26遺伝子座に挿入.
図1. Wntシグナルに応じてH2B-EGFPが発現するトランスジーンをROSA26遺伝子座に挿入.

図2. Wntシグナルに応じて様々な胚領域でH2B-EGFPの発現が観察される. 10日目胚(E10.5)では、四肢の伸長端(fl, hl), 耳胞(op), 尾芽(tb). 12日目胚になると乳腺(mg)でも活性が観察される.
図2. Wntシグナルに応じて様々な胚領域でH2B-EGFPの発現が観察される.
10日目胚(E10.5)では、四肢の伸長端(fl, hl), 耳胞(op), 尾芽(tb). 12日目胚になると乳腺(mg)でも活性が観察される.


 

今後の展望

Wntシグナルの分布・強度を1細胞レベルで解析できるR26-WntVisマウスは、胚発生や疾患におけるWntシグナルの役割を解析する上で強力なツールになると期待される。作製したマウスは理化学研究所に寄託されており、手続きを行えば入手できる。

 

参考