【研究成果報告】肥満によってインスリン抵抗性が発症するメカニズムを解明

2016年3月26日

報告者

大学院医歯薬学研究部循環器内科学分野 教授 佐田政隆

大学院医歯薬学研究部循環器内科学分野 特任講師 福田大受

 

研究タイトル

肥満によってインスリン抵抗性が発症するメカニズムを解明

 

研究経緯

徳島大学大学院医歯薬学研究部循環器内科学分野の佐田政隆教授、福田大受特任講師、同代謝栄養学分野の西本幸子大学院生らの研究グループは、肥大した脂肪細胞から放出されるDNA断片がマクロファージを活性化することで脂肪組織の炎症を引き起こし、インスリン抵抗性を発症させることを見出しました。なお、本研究成果は徳島大学、東京大学、昭和大学、大阪薬科大学との共同研究によるもので、3月25日付で以下の通り掲載しています。

 

  • 掲載誌名:Science Advances
  • 論文題目:Obesity-induced DNA release from adipocytes stimulates chronic adipose tissue inflammation and insulin resistance
  • 論文著者:Sachiko Nishimoto, Daiju Fukuda, Yasutomi Higashikuni, Kimie Tanaka, Yoichiro Hirata, Chie Murata, Joo-ri Kim-Kaneyama, Fukiko Sato, Masahiro Bando, Shusuke Yagi, Takeshi Soeki, Tetsuya Hayashi, Issei Imoto, Hiroshi Sakaue, Michio Shimabukuro, Masataka Sata.

 

研究概要

この度、徳島大学大学院医歯薬学研究部循環器内科学分野の佐田政隆教授、福田大受特任講師、同代謝栄養学分野の西本幸子大学院生らの研究グループは、ヒトとマウスの両方で、肥満個体は、痩せた個体に比べて、脂肪細胞の変性に関連した血液中の遊離DNA断片の濃度が多いこと(図1)と、血液中の遊離DNA断片の量がインスリン抵抗性の指標と相関する事を見出しました。また、これをきっかけに変性脂肪細胞(図2)から遊離するDNA断片が、本来は細菌由来のDNA断片を認識するToll様受容体9(TLR9)によって認識され、免疫担当細胞の1つであるマクロファージを活性化することもわかりました。実際に、肥満マウスの脂肪組織内では、DNA断片を貪食しているマクロファージを電子顕微鏡で捉えることができました(図2)。そして、TLR9を欠損したマウスでは、野生型マウスと同様の肥満を誘導しても、脂肪組織における炎症が軽度であり、インスリン感受性が保たれていることが分かりました(図3、4)。骨髄移植により作出した骨髄由来細胞にのみTLR9を発現するマウスでは、脂肪組織の炎症とインスリン抵抗性が高度であることが分かりました。また、マウスにTLR9の阻害薬を投与することで、肥満に伴う脂肪組織の炎症とインスリン抵抗性の発症を抑えることができました。

これらの結果は、肥満によって変性した脂肪細胞から遊離するDNA断片が、TLR9を介してマクロファージを活性化することで脂肪組織の慢性炎症を引き起こすことを示唆しています(図5)。

 

図1 血糖値・肥満度と血中の自己DNA断片の相関

 

図2 DNA断片を貪食するマクロファージの電子顕微鏡像

 

図3 内臓脂肪組織のマクロファージ免疫染色像

 

図4 インスリン負荷試験による血糖値の変化

 

図5 肥満によってインスリン抵抗性が発症するメカニズム

 

今後の展望

今回の結果は、肥満によって変性した脂肪細胞から遊離するDNA断片が、TLR9を介してマクロファージを活性化することで脂肪組織の慢性炎症を引き起こすことを示唆しており、新たな治療戦略の開発につながるのではないかと考えられます。糖尿病以外にも、動脈硬化など他の生活習慣病においても、局所臓器の細胞死を含めた細胞障害とそれに引き続く慢性炎症の存在は明らかになっています。今後は、遊離DNA断片を介した炎症惹起メカニズムが、他の生活習慣病のメカニズムとして共通であるか検証します。