最先端研究探訪 (とくtalk154号 平成26年1月号より)

2014年1月16日

オーラルケアから全身の健康を歯周病治療が糖尿病にも効果

全身の病気と歯周病との関係

口腔組織は、食べる、話すなど多くの機能をもっていますが、感染や外傷など侵襲を受けやすく、多くの細菌が存在している組織でもあります。

歯周病は、歯のまわりを構成する組織(歯肉、歯根膜、歯槽骨、セメント質)に、細菌が感染して炎症が起こり歯周組織が破壊される病気の総称です。歯周病は歯肉炎と歯周炎に大別され、炎症が歯肉に限局している場合を歯肉炎、歯周ポケットが形成され炎症が歯槽骨まで及ぶ場合を歯周炎と呼びます。発症や進行の度合いに個人差がありますが、ギネスブックでは、その感染者は人類史上最も多いと言われています。

歯周病は口腔内局所の病気ととられがちですが、近年の研究で、多くの全身の病気と歯周病との関連性が指摘されています。例えば肺炎などの呼吸器系疾患、心筋梗塞などの心疾患、糖尿病、低体重児出産などと深い関係があるというのです。

糖尿病による死亡率全国ワーストワンの徳島ですが、糖尿病は神経や血管の障害、免疫力の低下などにより、様々な合併症を引き起こします。糖尿病の患者さんは歯周病にもかかりやすく悪化しやすいことが、かなり以前から知られていましたが、永田先生は糖尿病と歯周病が相互に影響し合っていることに関して、糖尿病患者さんでは歯周病の症状が激しいことに着目。その診断指標を見いだすことによって、糖尿病関連歯周炎の早期発見、早期治療に貢献できるプロジェクトに取り組んでいます。

「糖尿病の患者さんに歯周病の予防や治療の重要性と必要性を訴えていくことが大切です」と言う永田先生の教室では、臨床診断研究においては、糖尿病対策センター、薬学部などの学内組織や市中の病院(川島病院、徳島逓信病院)と共同研究を行い、また基礎的研究においては、ミネソタ大学をはじめ国内の大学や企業と連携して研究を進めています。

  

歯周病予防に努めよう

歯周病の検査では、歯周ポケットの深さを測定したり、レントゲン写真で歯槽骨の状態を診断したりします。歯周ポケットとは、炎症によって歯と歯肉の境界部の組織が破壊されてできる深い溝のことです。健康な人では約1〜2mm 程ですが、歯周病にかかると、この溝はどんどん深くなり、3〜4mm 以上で病的な歯周ポケットになります。40代以上の人では、半数を超える人が歯周ポケットなど何らかの歯周病の所見をもつと言われています。

歯周病の原因は歯に付着するプラーク(歯垢)です。このプラークがバイオフィルム(細菌がネバネバになって取りにくい固まりとなった状態) となって歯周ポケットに定着し、細菌が歯周組織の炎症を慢性的に持続させた結果、徐々に(人によっては急激に)歯周組織が破壊されます。歯周病を予防するためには、日々の丁寧なオーラルケアを継続し、プラークを除去することがきわめて重要です。

糖尿病関連歯周炎の検査のスピードアップが今後の課題

 

永田先生は、昨年4月に日本歯周病学会の理事長に就任し、歯周病と多くの病気との関連性や治療の大切さについて、全国的に啓発活動を展開されています。

日本歯周病学会のホームページでは、

「近年、歯周病は単に口腔内の一疾患にとどまらず、全身の健康と密接に関連した病気であることが明らかにされています。たとえば、歯周病は糖尿病の増悪因子の一つであり、歯周病を治療することによって血糖値が改善することは学術的根拠のある事実として認められています」と力説されています。

永田先生の研究室では、患者さんの歯周組織から採取した歯肉溝滲出液という微量の組織液中に含まれるカルプロテクチンおよびグリコアルブミンというタンパク質の量を測定することによって、糖尿病関連歯周炎の診断研究を進めています。

「複雑で時間のかかるタンパク質検査のスリム化および臨床現場での診断の迅速化が、今後の課題のひとつです。患者さんの診断と治療に役立つ研究成果を出すために、迅速診断キットの開発など企業との連携研究も進めています。歯周病をもつ患者さんで自分が糖尿病であることを自覚していない人も多く、これからは歯科の診断で糖尿病が発見される可能性も多いにあります。」

今や生活習慣病の代表となった糖尿病。様々な角度からその予防・治療の研究が進んでいますが、糖尿病が歯医者さんで、という発想はまだまだ知られていないように思います。今後の永田先生の研究が大きな「舵取り」となるのではないでしょうか。

永田 俊彦のプロフィール

  • 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部
  • 再生修復医歯学部門
  • 顎口腔病態制御学講座
  • 歯周歯内治療学分野(歯学系) 教授
  • 1978年   九州大学歯学部卒業
  • 1979年   徳島大学歯学部附属病院 助手
  • 1986年   徳島大学歯学部附属病院 講師
  • 1988年   トロント大学歯学部 客員研究員
  • 1995年   徳島大学歯学部 教授
  • 2004年   徳島大学大学院
  • ヘルスバイオサイエンス研究部 教授
  • 2004年   徳島大学 学長補佐
  • 2007年   徳島大学 歯学部長
  • 2013年   日本歯周病学会 理事長

[取材] 154号(平成26年1月号より)