最先端研究探訪 (とくtalk122号 平成18年1月号より)

2008年7月16日

総合科学部人間社会学科
平井 松午 ひらい しょうご
豊田 哲也 とよた てつや
田中 耕市 たなか こういち

 

平面の地図情報を立体的に活用

 

応用範囲無限大のGIS

例えば、古い地図と現在の地図との比較から景観変化をみたり、都市計画やエリアマーケティングのための調査をおこなったり、地図を利用したさまざまな分析技術において日々進歩しているのがGISです。

GIS(Geographic Information System)は「地理情報システム」と呼ばれ、デジタル化された地図画像とデータベースを結びつけ、空間的なデータを総合的に管理しようとする技術です。ビジュアルな地図表示や複雑で高度な計算が可能になり、迅速で的確な意思決定支援に役立ちます。

1960年にアメリカ・カナダでその構想が始まったGISのシステム(ソフトウェア)は、コンピュータの進化とともにどんどん高度化し、近年ではパソコンでも手軽に使えるようになってきました。

日本では1995年の阪神淡路大震災の時に、GISの重要性が再認識されたと言われています。被災者の安否確認や建物・道路など被害状況の把握から復興計画まで、膨大な情報を紙の地図や手作業で扱うのは困難をきわめました。データを一元管理できるGISは、災害時に大きな威力を発揮できることがわかったのです。

一般企業では、1993年から『マクドナルド』がGISを導入して立地調査や売り上げのシミュレーションをおこない、猛烈な出店攻勢で他社を大きくリードしたことが有名です。その後、多くの企業がGISを導入するきっかけになりました。また私たちの身の回りでは、カーナビや携帯ナビなどにも応用されています。

 

全国に先がけて「GIS共同利用室」の設置

徳島大学では2001年6月、全国の大学に先がけて、GISを本格的に研究・学習できる「GIS共同利用室」を開設しました。

「学内へのGISの導入、共同研究室の設置に際しては斎藤前学長や石原元学部長にたいへんお世話になり感謝しています」と語る平井先生は歴史地理学の専門で、絵図や古地図の研究をしています。

実は徳島大学の附属図書館は絵図の宝庫。伊能図や阿波国大絵図など貴重な絵図を約200点も所蔵。特に伊能図は西日本最多数の10点を所蔵しています。平井先生は2年間をかけて全点の調査とデジタル化を進めてきました。この成果のうち44点がWEB上で公開されています。→WEBサイトはこちらから内部リンク

平井先生は、それまでトレース台などを使って手書きしていた地図をデジタル化することに、国内では早い時期から取り組んできました。その中でGISに興味を持ち始めたのです。

そんな思いを実現する推進力となったのが、1997年に京都大学から徳島大学へやってきた豊田先生です。豊田先生の専門は都市地理学や経済地理学。まさにGISは研究にうってつけのツールです。そこで平井先生とともにプロジェクト予算を申請。国立大学としては全国初となる「GIS共同利用室」の設置が実現しました。

「私の研究は、地域の経済活動や生活環境などを数値化し、その実態を比較したり将来像を検討したりすることです。こうしたデータの視角化にGISはもってこいですね。例えば、土地利用の変化や公共施設からの距離などを簡単に計算し表示できます」

 

GISを利用して地域社会に貢献

しかしGISそのものは二人にとって専門外の分野。当時は参考文献も少なく試行錯誤が続いたそうです。

少しでも多くの人にGISを知ってもらうためワークショップを開いたり、地域との連携を深めるため産業界や行政を交えたシンポジウムを開催したり。第一線のGIS研究者を非常勤講師として招き集中講義もおこないました。

さらに当分野の充実のためにGISの専任教官を公募。選ばれたのが当時東京大学空間情報科学研究センターに所属していた田中先生です。2003年10月に徳大に赴任してきた田中先生は交通ネットワークの研究が専門です。

「GISを用いた教育や研究に関して、徳大は国内の大学でトップクラスです。一人でも多くの卒業生がGIS関連の仕事に就けるよう、その普及に努めたいです」と田中先生。

ここに歴史地理学と都市地理学、そして交通ネットワークという時空を超えたGISチームが誕生。地域や地元産業、さらには災害時への対応などGISを多角的に応用した研究が進められることになりました。

 

 

[取材] 122号(平成18年1月号より)