最先端研究探訪 (とくtalk133号 平成20年10月号より)

2009年5月29日

大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 生体情報内科学
粟飯原 賢一 あいはら けんいち

 

動脈硬化症早期発見の研究に取り組む

 

先端工学技術が医学の世界を開く

かつては中年太りなどと呼ばれていたお腹の出っ張りは、内容とは裏腹にメタボリックシンドロームという一見スマートな名前が付けられ、中高年層だけでなく若年層にまで浸透しています。

大きな原因として、食生活の欧米化や運動不足が指摘されています。メタボリックシンドロームは内臓脂肪蓄積による腹部肥満を基盤として、脂質代謝異常・高血圧症・高血糖などの代謝異常の複合病態を総称したものですが、これが心血管病を増加させることがわかっており、その予防や対策が国民的課題になっています。

粟飯原先生は現在「動脈硬化症」を専門に研究に取り組んでいます。手足などは動脈がおのおの二本ずつあるのに対して、心臓や脳は終動脈と呼ばれ、動脈が一本しかないために動脈硬化症が原因で閉塞を起こすと脳梗塞や心筋梗塞を発症してしまいます。そして血液が循環しなくなることで障害を受けた脳や心臓は、元の健康な状態には戻せなくなります。そのために早期発見がとても大事なのです。


HCIIはPCI後のステント再狭窄や頸動脈硬化を抑制する

 

動脈硬化の危険因子としてコレステロールや高血圧など良く知られていますが、動脈硬化発症のメカニズムや危険因子に関してまだ十分全容が解明されていません。先生は動脈硬化の予防因子として「ヘパリンコファクター2(以下HC2と略)」というタンパク質の一種に着目しました。

きっかけは動脈硬化症の危険因子が、軽症高血圧症だけだったにも関わらず、心臓・頸動脈・大動脈など多発性にかつ重症の動脈硬化症を呈した女性患者に遭遇したことです。この患者さんは血液中のHC2が欠乏していることが判明し、HC2は動脈硬化の予防において重要な役割を果たしている可能性が考えられたのです。その後、マウスを使った実験では、HC2が少なければ動脈硬化が悪化し、活性酸素が増えることや、血小板が固まりやすいことを証明しました。逆にHC2を活性化すれば動脈硬化を予防できるのではないかと考えました。今はこのことを証明するデータを集めることに尽力しています。

ただHC2を人工的に合成する方法はまだ確立されておらず、献血に頼るか、肝臓の機能を高めるという方法しかありません。今後はHC2の臨床応用が大きな課題となります。

先生は現在、大学病院の「アンチエイジング医療センター」の担当医も勤めているので、将来はHC2の検査も項目に加えてデータを集積したいと考えています。
「アンチエイジング医療センターは今年3月に開設したばかりですので、多くの方に知ってもらって、メタボリックシンドロームの予防を進めたいと思います」ということで、同センターの検診を紹介します。

 

徳島大学病院 アンチエイジング医療センター

Anti-Aging Medical Center: AAMC
最新の診断装置を用いた検診でメタボリックシンドロームの予防

徳島大学病院「アンチエイジング医療センター」は、メタボリックシンドロームや動脈硬化症の早期発見に特化した健康診断といえるものです。

ホームページ http://www.tokushima-hosp.jp/facility/anti_aging.html外部リンク

 

メタボリックシンドロームの検査の様子

8:30

当日の朝は絶食で来院しますが、糖尿病治療薬以外、特に高血圧症の薬剤は水分のみで前もって服用してから検診を行います。受付を済ませたら、検診の内容や注意事項等の説明を受け、その後簡単な身体測定をします。

 

9:00

心血管症発症の原因となる内蔵脂肪の計測を目的に、まずは臍のラインでCT撮影を行います。そしてその画像をもとに、内臓脂肪面積を専用ソフトにて算出します。

 

9:30

次は血液と尿の検査です。検尿・採血・心電図・脈波伝播速度・血管内皮機能・頸動脈エコー・ブドウ糖負荷試験(ブドウ糖負荷試験は糖尿病の人には行いません)があり、様々な角度から検査してもらえます。特に血管内皮機能は、全国でもまだあまり設置されていない最先端の装置が導入されています。

 

12:00

ブドウ糖負荷試験は30分・60分・120分の3回。採血と採血の間の空き時間を利用して、検診担当の藤中雄一医師によるメタボリックシンドロームの予防と対策の講習があります。わかっていてもなかなか実行できないことや、新しい発見があるかもしれませんよ。

 

13:15

待ちに待った昼食です。もちろんメタボリックシンドローム対策のためのヘルシーなスペシャルランチです。また食後には栄養指導があります。これをご家庭で実践できるかどうかが問題ですが。

 

検診は完全予約制となっています。

電話や病院受付に置いてあります

パンフレットの専用申込用紙、もしくは徳島大学病院アンチエイジング医療センターのホームページより申込書をダウンロードしてご予約下さい。

http://www.tokushima-hosp.jp/facility/anti_aging.html外部リンク

  • 検診日は毎週金曜日(祝日・年末年始除く)です。
  • 料金 48,300円(昼食代込み)
  • お申し込み・お問い合わせは、
    徳島大学病院地域医療連携センターまで。
  • 電話番号: 088-633-9106
  • FAX番号: 0120-335-979
  • 月~金の平日9時~16時(祝日・年末年始除く)

 

粟飯原 賢一氏のプロフィール

  • 徳島県生まれ
  • 1991年 徳島大学医学部医学科卒
  • 2003年 徳島大学大学院医学研究科ストレス制御医学助手
  • 2004年 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部
    生体情報内科学COE研究員
  • 2004年 徳島大学大学院医学研究科修了(医学博士)
  • 2006年 徳島大学医学部・歯学部附属病院
    先端医療開発研究プロジェクト循環器内科助手
  • 2007年 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部
    生体情報内科学講師/内分泌代謝内科

[取材] 133号(平成20年10月号より)