研究テーマ

研究概要

当研究室ではシェーグレン症候群、関節リウマチ、Ⅰ型糖尿病などの自己免疫疾患の発症機構を多角的なアプローチにより解明することを主眼において研究を進めております。また、金属アレルギーなどの免疫疾患に関しての研究も行っています。さらに平成24年4月から工藤准教授の加入により発癌機構の解明と腫瘍免疫に関する研究にも力を入れています。

 

 

 

シェーグレン症候群の病態解明に関する研究

シェーグレン症候群

私たちの体の中では、絶えず細菌やウイルスなどの外来の病原体を排除する免疫システムが正確に作動しています。免疫システムは決して自分自身の組織や細胞 を攻撃することは無いはずなのですが、様々な原因で免疫システムの機能異常が生じると、自身の体を自身の免疫システムによって攻撃してしまう『自己免疫疾 患』が発症します。ドライアイ、ドライマウスを主な症状とするシェーグレン症候群は涙腺や唾液腺を標的臓器とする自己免疫疾患です。私どもの研究室では シェーグレン症候群の疾患モデルを中心として、その病態機序に関して多角的なアプローチで研究を進めています。病因に基づいた新たな診断法や治療法を開発 することで、免疫難病に苦しむ世界中の多くの患者様が少しでも健康を取り戻すお手伝いができればと願っております。

 

 

自己免疫疾患における性差のメカニズムに関する研究

自己免疫性差

シェー グレン症候群や関節リウマチなど多くの自己免疫疾患は閉経期以降の女性に発症することが知られています。生体のホルモン環境が大きく変化する時期に、免疫 システムに何らかの異常が生じることによって自己免疫疾患がこの時期に発症するものと考えられてきましたが、詳細な分子機序に関してはよく分かっていませ んでした。最近の私どもの研究によって性ホルモンと標的臓器の関係が少しずつ解明されてきましたが、まだまだ性差の謎は不明な点が多いのが現状です。あら ゆる角度から自己免疫疾患における発症の性差のメカニズムを探求することによって、女性の健康維持機構を明らかにすることができます。

   


T細胞のシグナル異常と自己免疫疾患に関する研究

T細胞

免疫システムにおける自己、非自己の認識はT細胞が主役を担っています。骨髄由来のT細胞前駆体は胸腺において非自己にのみ反応するような教育を受けることによって、正常なT細胞が中心となって私たちの末梢の免疫システムを維持しています。末梢のT細胞に様々な刺激が伝わり、多様なシグナルカスケードが作動することによって、T 細胞を中心とした免疫反応が引き起こされます。T細胞の複雑なシグナルに少しでも異常が生じると、正常な免疫反応を維持することができなくなります。私どもの研究室ではT細胞における様々な受容体分子、シグナル分子、転写因子などの発現や機能に異常が生じることによって発症する自己免疫疾患の病態機序を解明しようとしています。T細胞を標的とした新たな治療薬の開発が期待されています。

 

 

金属アレルギーの病態に関する研究

金属アレルギー

私 たちの身の回りには様々な金属が存在しています。歯科治療に用いられる金属は常時、口腔内で生体と接しており、金属アレルギーの原因となることがありま す。私どもの研究室では、金属アレルギーの疾患モデルを確立し、詳細な分子メカニズムの解明を目指した研究を行っています。明らかとなった分子機序に基づ いた診断法やさらに治療法の開発を目標に、臨床的な応用研究への展開を目指しています。

 

 

内分泌かく乱物質と免疫系に関する研究

内分泌かく乱物質

ダ イオキシンを代表とする環境ホルモンは生体内に様々な影響を及ぼすことがよく知られています。私どもの研究室では新生児期にダイオキシンに暴露されると自 己免疫疾患が発症するリスクが上がることを、シェーグレン症候群の疾患モデルを用いて明らかにしました。しかし、環境ホルモンが及ぼす免疫システムへの影 響に関する詳細なメカニズムは未だ不明です。免疫細胞への環境ホルモンの直接の影響を探索することによって、免疫疾患の発症機序の一端が解明されるととも に、人間の生態系全体を再考する糸口になることを願っています。


細胞周期調節因子のユビキチン分解異常と癌

癌

癌の発生には、細胞周期の異常は必須であると考えられています。細胞周期を調節する因子の多くは、ユビキチン分解システムによりタンパクの質的・量的制御を 受けることが知られており、細胞周期調節因子の質的・量的制御が細胞周期の円滑な進行を制御していることが明らかにされつつあります。これまでに、癌における細胞周期調節因子の発現異常に関する多くの研究がなされてきましたが、細胞周期調節因子の異常が生じるメカニズムについての報告は未だ少ないのが現状 です。我々は、これまでに、細胞周期におけるG1期停止に関わるp27がユビキチン分解に関わる因子の異常により過剰分解されることや細胞分裂に重要なAurora-Aキナーゼが恒常的なリン酸化を受けることでユビキチン分解から免れ、過剰発現することを明らかにしました。さらに、細胞周期調節因子のユビキチン分解に関わるSCFユビキチンリガーゼ複合体の構成因子であるF-boxタンパクや細胞分裂期で活性化するAnaphase promoting complexAPC)ユビキチンリガーゼ複合体の基質分解機構やAPCの抑制因子であるEmi1に着目して研究をしています。細胞周期調節因子のユビキチン分解機構やその制御機構の破綻による癌化との関連を明らかにすることが、癌の発生機構の解明のみならず新たな抗がん剤の開発や治療法への応用につながると考えています。



口腔癌の浸潤に関わる新規因子の同定とその機構

 

癌の浸潤・転移機構には、種々の癌で共通に認められる異常に加えて、臓器特異的な異常があ りうると考えられていることから,我々は、他臓器の癌とは異なる口腔癌に特化した浸潤・転移機構に着目しました。我々は高浸潤能を有する口腔癌細胞株を独 自に樹立し、口腔癌の浸潤に関わるいくつかの新規因子を同定しました。実際に、同定された新規因子であるPeriostinIFITM1Wnt-5bMMP-10MMP-13は、 いずれも口腔癌の浸潤を促進させることが実験的に証明され、臨床症例でも異常がみられることを明らかにしました。これらの口腔癌における増殖・浸潤に関す る分子病理学的研究成果は、実際に口腔癌症例において、悪性度を予測するための診断に有用であることを明らかにするとともに、これらの異常が、口腔癌の進 展過程のどの時期に発生するかをつきとめ、それら因子がより効果的な治療の標的となりうることを証明しました。これまでの研究成果は、患者の予後を最も左 右する癌の浸潤・転移を抑制する分子標的治療や新規の創薬開発を通じて臨床に大きく貢献することが期待されます。