平成29年度徳島大学入学式式辞

平成29年度徳島大学入学式式辞

平成29年4月6日(木曜日)

会場 アスティとくしま

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。また、新入生のご家族や関係者の皆さんに対し、徳島大学を代表し、心よりご入学のお祝いとお慶びを申し上げます。

皆さんは、新しい気持ちで入学し、大学生活を楽しみにしていると確信しています。徳島大学では、皆さんが有意義な大学生活を送り、卒業の時には、意気揚々と巣立っていくことができるように、体制を整えておりますので、もし困ったことなどありましたら、教員に相談してください。

さて、本日はお祝いのことばとして、「必ず人生で成功する秘訣」について紹介します。まず、皆さんに、お願いがあります。皆さんが大きなVisionを持つことをお願いしたいのです。人や会社の将来の方向を示すものを、一般に、Visionと呼んでいます。これがないとあなたはどの道を歩んで行くのかを決めることができません。目的地の方向が不明であれば、明日、どの方向に向かって歩いていいのかわからないのと同じです。高校生の時は、大学に入ることが一つの方向性でしたが、その後のことについてはあまり真剣に考えていないのではないかと思います。そのため、大学に入学して、自分の進むべき道が見えない場合は、日々の生活が安易なその日暮らしになってしまいます。

皆さんはまだ若く、人生の方向性など、考えたことはないかもしれません。しかし、一度、自分の将来の方向性について、今、考えてみることは、悔いのない人生を過ごすために必要です。それを考えて卒業までの大学生活をおくるのと、そうしなかった場合では将来に大きな差が生まれます。

一つの例を紹介します。iPS細胞の発見でノーベル生理学・医学賞を2012年に受賞した山中伸弥博士が、米国のグラッドストーン研究所で博士研究員をしていた時に、彼の先生から、「あなたのVisionは何ですか?」と尋ねられた時に、答えられなかったエピソードを紹介しています。彼の先生は、「日本人は一生懸命働く。ただ、そこにビジョンがない」と言っていたそうです。

このVisionが、彼をノーベル賞に導くことになります。山中博士が、まだ奈良先端科学技術大学院大学の准教授として赴任したばかりの無名で、研究費もない時に、大学院生に研究室に来てもらうための方策、それが魅力的なVisionを示すことでした。「Visionだったら直ぐにでももてる!」と、「万能細胞を受精卵からではなく患者自身の皮膚や血液の細胞から作る」を具体的なVisionとしてアピールしました(注1)。これは、当時「実現できない」と考えられていた研究の目的で、おおきな変革を生むVisionです。山中先生は、それを実際に達成することによりノーベル賞を受賞することになります。このような大きなVisionを持つことが、成功への近道になります。今では、たぶん彼のVisionは、「iPS細胞で世界の人々を健康にする」だと推測しています。

そこで、私の皆さんへのお願いは、それぞれMy Visionを持っていただくことです。しかも、なるべく大きなMy Visionを決めてください。大きなとは、世界レベルの問題を解決するというVisionです。それは、人生の方向性を決めることになります。Visionが皆さんの行動指針になります。

次は、そのMy Vision をどのようにして実現するか?ということです。「GRIT」という言葉を聞かれたことがありますか?ダイヤモンド社から出版されている本のタイトルで、「やり抜く力」と訳されています。著者はアンジェラ・ダックワース教授です。彼女は2013年にマッカサー賞を授与されたペンシルバニア大学の心理学の教授です

彼女アンジェラは、「世界で成功している人々を分析し、何が成功をもたらす要因なのか?」を解明することを研究テーマにしました。通常は、才能という言葉で、解決してしまいますが、実は、「世の中には、素晴らしい才能を持った人々が多くいますが、その人々が成功するとは限らない」のです。彼女は学問、芸術・スポーツの分野からビジネスの世界など、多様な分野を対象にして、世の中のもっとも成功している人物にインタビューし、解析し、その結果、「成功している人々に共通していること」を見つけ出すことに成功するのです。その成功の要因は、どの分野にも共通しており、それが「グリット」、つまり「やり抜く力」だったのです。詳細は是非本を読んでいただきたいのですが、つまり、大きなVisionを持って、成功するまでやり抜くことが、成功の秘訣なのです。同義語反復的ですが、ポイントはVisionとGritです。

では、やり抜く力は、どのようにして得ることができるのでしょうか?人がGritをどのように発達させることができるかについての研究はほとんどないそうです。私が考えるに、重要な点は、「やりぬく力」は、教育と訓練で獲得することができる能力です。つまり、誰しもそれを実現したいと思えば、できることなのです。まず、Passion(熱意)です。これがVisionと関係してきます。例えば、「進化のメカニズムを解明したい」とVisionを持っていれば、進化に関係する勉強をPassion(熱意)を持ってできます。次のキーワードは、Perseverance(粘り強さ)です。粘り強さは、楽観的な発想から生まれます。つまり、失敗することを恐れないことです。失敗しても落ち込まないことです。失敗は成功のもとなのです。失敗することが成長することにつながるとポジティブに思考することです。

最後に、多摩大学客員教授で前ソフトバンク社長室長であった嶋 聡氏が松下幸之助氏と孫正義氏から学んだ「成功の秘訣」(注2)について紹介します。松下氏はその秘訣とは「成功するまでやめんこっちゃ」と言い、孫氏は、「やり抜くこと。これが成功の近道」と言っていたそうです。

皆さんがもしまだ大きなVisionを持っていないのであれば、それを決めて、粘り強く楽観的にGritしてください。それが成功の秘訣です。

 最後になりましたが、徳島大学は、皆さんが有意義な大学生活をおくれるように、支援することを宣言いたしまして、私のお祝いの言葉といたします。

 

(注1)「ビジョンだいじに」 ノーベル賞・山中教授の人生を変えた一言とは

 

(注2) 内外情勢調査会[会報誌]J2TOP pp.13~15, 11月号 (2015).

 

最終更新日:2017年4月7日