平成28年度徳島大学入学式式辞

平成28年度徳島大学入学式式辞

平成28年4月6日(水曜日)

会場 アスティとくしま

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。

また、新入生のご家族や関係の皆さんに対し、徳島大学を代表し、心よりご入学のお祝いとお慶びを申し上げます。 始めに、皆さんが入学しました徳島大学の歴史について、簡単に紹介しておきます。徳島大学は、戦前の徳島師範学校、徳島工業専門学校、徳島医学専門学校を母体として、1949年に設置され、学芸学部、医学部、工学部の3学部で新制大学としてスタートしました。学芸学部は、後に教育学部、鳴門教育大学に発展しました。1951年に薬学部、1976年に歯学部、1986年に総合科学部を設置し、5学部体制となっておりました。そして、本年30年ぶりに新学部である生物資源産業学部を設置いたしました。さらに、工学部と総合科学部も改組し、工学部は理工学部、総合科学部も、主に文系の社会総合科学科で構成される学部に改組いたしました。これで6学部体制になりました。従って、本年度から、伝統のある医学部、薬学部、歯学部に加えて、新総合科学部、理工学部、生物資源産業学部に最初の学生を迎えることになりました。このように、徳島大学は、社会の要請に応えるべく、大きく変化して本年度を迎えることになりました。

さて、皆さんの未来について、少しお話したいと思います。今から約20年後、20歳前後の皆さんが、40歳前後の年齢に達したときに、自分はどのような人間になっているかを想像してみてください。未来を予測し、目標となるような状態を想定し、そこを起点に現在を振り返って、今何をすべきかを考えることが提案されています。これは、バックキャスティングという方法です。いわば未来からの発想法ですが、現在の自分がなすべきことを考える発想法です。

一つのグラフを御覧いただきましょう。これは、国連人口基金東京事務所ホームページから引用したものです。横軸が年、縦軸が世界の人口です。もちろん、未来の社会において、何が生じるかを正確に予測することはできませんが、一部のことについては、予想ができます。その一つが人口の増加、あるいは減少です。この図は、地球上の人口が爆発的に増加しており、それがさらに継続することを示しています。世界の人口は1950年ころから急激に増加し、2015年の人口は、約72億人です。2036年、今から20年後、地球上の人口は、80億人になります。

人口の急激な増加が生じると気になるのは、食糧問題とエネルギー問題です。Food and Agriculture Organization of the United Nationsによると、今でも飢餓が原因で年間1500万人以上が亡くなっており、その7割が子供であり、この状況がさらに悪化することが予想されます。日本は、年間五千五百万トンの食糧を輸入しています(農林水産省資料より)。しかも、かなり廃棄しています。もし何らかの理由で、日本が食糧を輸入できなくなった場合に、1年後に三千万人が餓死すると試算されています(NHK特集1978より)。エネルギー問題も深刻です。石油や石炭などの化石燃料は、無限ではなく、やがて枯渇すると考えられています。我々はこの予想される未来に対して、早急に準備をしなければなりません。

一方、日本は人口が減少しています。しかも、高齢化社会が訪れます。今、団塊の世代が六十八歳前後ですが、八十八歳前後になります。この世代は、若い世代に大きな負担をかけることになります。また南海トラフの地震が、30年以内に、70%の確率で生じると考えられております。これは、たぶん間違いなく生じる未来です。バックキャスティングして、今のうちにその対策をしておかないと大変なことになるのは明らかです。

それでは、どのような対策を取れば良いのか?それが皆さんの大きな課題になります。安定的に継続可能な社会を実現するためには、①大地震への備え、②食糧問題、③エネルギー問題、④少子高齢化社会の問題、⑤地球温暖化等の問題について対策を至急実施しなければなりません。その実施は、間違いなく皆さんが中心に行うことになります。

社会を別の視点から見てみましょう。車が自動運転される時代が来ます。ロボットが、労働をする時代が来ます。ムーアの法則をご存知でしょうか。「インテル入ってる」で有名なインテル社の共同創設者ゴードン・ムーア博士が1965年に唱えた経験則で、コンピュータの性能が2年で倍増するというものです。この法則が予言しているように、今でも、多くのものが、急速にデジタル化されています。コンピュータの発展により、多くの高度な技術が、だれでもが利用できる技術になり、既存の企業が破壊されています。日本の家庭電気メーカーは悲惨なことになっています。一方、この法則に従う人工知能などの技術革新が世界を救うことにもなります。これも間違いなく皆さんが中心になって行うことになります。

もう一つ強調しておきたいことは、20年後には確実に生命科学の飛躍の時代が訪れることです。この指数関数の曲線は、遺伝子DNAの塩基配列が決定された量を示しています。ムーアの法則に従ったコンピュータの発展が、生命科学の画期的な発展を牽引しています。生命科学の発展はまだスタートしたばかりの段階です。これだけ発達した世界において、実はわれわれ人間は自分のことを知りません。例えば、私を見ていると思っている、その画像は、皆さんの脳の中で作成されたもので、いわば虚像です。皆さんは、この虚像の中から、ほんの一部を切り取って、記憶するのです。脳で、どのように処理されているのか、われわれはまだ知らないのです。もっと不思議なのは、人類の誕生です。ヒトは生命が地球上に登場してから約40億年後に登場した生物です。

40億年を1年と考えると、ヒトが登場するのは12月31日の夜です。この急速な進化を生命科学がどのように解明するかが、地球上の生命の将来を決定することになると思います。

これまで多くの皆さんは、自分中心の勉学で、今、話しをしました未来を想像する機会は少なかったと思います。これからは、少し世界にも眼を向けて、自身が世界のどのような問題に関与するのかを明確に示す、My Visionを考えてください。「食糧問題を解決する」「健康問題を解決する」「貧困を解消する」「エネルギー問題を解決する」「地震被害を最小にする」「進化のメカニズムを解明する」「ガンを撲滅する」など、まずはこのようなMy Visionを決めてください。それに向かって大学あるいは大学院で教育を受け、研究をしてください。

本日の入学生の皆さんがMy Visionを実現できれば、確実に持続可能な明るい日本、そして世界が実現されることになるでしょう。皆さんの充実した大学生活と今後の発展を切に願い、私のお祝いのことばといたします。

最終更新日:2016年4月11日